〜計画〜


謎に試練を求める男−プロローグ−

    とにかく野望と煩悩をべらぼうに持つ男がいる。
    その男は学生で、留年の危機を常日頃から感じているにもかかわらずなかなかレポートや試験のための勉強をしない。それどころかアパートの一室で猫を飼い大酒を飲み、バケツサイズのプリンを作っては友人らと朝まで語り合い、ある時は授業そっちのけで連日釣りに興じ、またある時は原付で1日300キロ以上をひたすら走るというようなことばかりやっていた。
    そんな男が前々からやりたいやりたいと言っては実行に移してこなかったことがある。それは、己の持っているすべての免許を駆使してここ高知から実家の北海道に帰るという計画だ。
    多くの善き友人や悪い友人にこのことを話したが、今までこれを良い事だとする者は2人しかいなかった。また、その2人以外これが成功するとも思っていないようだ。
    しかしこれまでも多くの困難に打ち勝ってきた男である。たとえば去年の夏、旭川から札幌までその距離およそ片道150キロ余りを、小学校以来の友人と高校のころ使っていた壊れかけの(友人のは壊れていた)ママチャリで走破したことがある。そして当然のことながらそれで帰ってきた。あの時は達成感があったのかどうかよく分からなかったが、確かなことは非常に疲れたということだった。
    そしてその4日後に、今度はキックボードで往復60キロを激走した。友人は途中派手にこけてしきりに痛い痛いと言っていたが、構わず走り続けた。後から聞いた話だが、足の指の骨を折っていたらしい。
    また、一昨年の秋は大学行事だとかなんだとかいうやつで、一日かけて100キロを歩いた。去年も途中まではサポートする側だったはずなのに、気づけば50キロ以上を友人と一緒に歩いてしまい、結局ゴールしたあと腰が抜けるという経験までしてしまった。
    こんなにも過酷な経験をしてきたんだ、今回の挑戦も今までとはケタが違うがなんとかできるだろう。そう余裕の表情で話すその男が持っている免許は、原付のみ。